先日、楽天によるフリーテルの買収のニュースをお伝えしましたが、 現在、M&Aに前向きな通信キャリアは多くKDDIも16年度から18年度の3年間で合計5,000億円の投資予算を準備しています。
多額のM&A予算を準備しているKDDIですが、 今回、設立から3年しかたっていない若手ベンチャーの買収を決定しました。
1.IoTとは? テクノロジー業界で近年盛り上がっているのがIoT(Internet of Things)です。
IoTは、電子空間に存在するインターネットと現実に存在するモノとを接続する技術のことで、 ・留守中のペットの「餌を食べている」「トイレをしている」などの情報を画像や文字で知らせてくれる。
・遠隔操作で炊飯器を使ってご飯を炊くことができる。
・住んでいる地域の天候情報を取得し、現在の天気や降水確率に応じて色が変わる傘立て など、日常生活の様々なシーンで活用されています。
企業での活用も多く、
・自動販売機の在庫状況や商品ごとの売上や販売個数をリアルタイムで企業側に送信したり、電子マネーで購入したことのあるユーザーの属性を読み取っておすすめ商品を案内する。
・バスや地下鉄の車両に通信機器を設置し、利用者にリアルタイムで現在の運行状況や車両位置を伝える。
など、マーケティング活動に役立てられています。
2.KDDIが買収したIoTベンチャー ソラコムとは?
ソラコムは、アマゾンのクラウドサービス「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」の日本での立ち上げを引っ張り、AWSの顔としても名の知れた玉川憲氏が2015年に立ち上げた企業。
玉川憲氏がAWSをはじめとした自身の経歴をもとに、 「フェアで、フラットで、オープン」どの企業でも低いコストでIoTに取り組むことができるようにとの玉川憲氏の想いをもとに運営されるソラコムのIoTは多数の企業が利用し、 創業3年目ながら、既に7000を超える企業や個人ユーザーが利用しています。
個人ユーザーでも利用できる一方で、 大阪ガスやローソンなどの大手企業も多数利用しています。
そのユーザー層の広さがソラコムの特徴です。
事業会社がスタートアップ企業に投資し、 ・上場の際に投資資金を回収する。
・子会社として買収する。
などのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)投資が日本国内でも活発になっています。
通信キャリアも大手三社ともにCVC投資に積極的です。
CVC投資が盛り上がりを見せ始めた2011年にNTドコモがまずNTTドコモ・ベンチャーズを立ち上げ、続く形でKDDIもKDDIオープンイノベーションファンドを立ち上げました。
ソフトバンクグループは時期的には遅れる形となりましたが、 2017年に10兆円に及ぶ大規模なファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」をサウジアラビアと共同で立ち上げました。
国民のほとんどが所持している携帯・スマートフォンはIoTとの高いシナジーが期待できるため、通信キャリアは多額の資金を投じてでも競合他社に先行しようとしている見込みです。
ソラコムは、KDDIが買収したのちも創業者の玉川憲氏が引き続き社長業を継続します。
玉川憲氏が考える「フェアで、フラットで、オープン」でありたいというビジョンを成し遂げるうえで、KDDIがもつ大企業の資本とグローバルな展開のしやすさがメリットになるとソラコム側が考えてのM&A成立のためです。
ソラコムには多くの企業が期待しており、 スパークス・トヨタ自動車・三井住友銀行が出資する未来創生ファンドなど国内外の様々な投資ファンドが以前より出資しています。
KDDI傘下になった後のソラコムの今後の発展にも期待する企業は多く、 格安スマホが携帯市場のシェアを奪っていく中で下落していたKDDIの株価はソラコムの買収を機に持ち直しました。
今後、通信キャリアだけではなく、 様々な業界でM&Aの成否が会社の成功を大きく左右していくようになるのかもしれません。