格安スマホ業界でのM&Aが盛んに行われています。
ドコモ・ソフトバンク・auの3キャリアの独占状態であった通信キャリア・携帯キャリアの業界に変化が起きています。
通信キャリアは今まで、大手3社が独占し、新規参入が非常に難しい業界でしたが、 格安の携帯端末を使い通信速度の制限などによって月額利用料を抑える格安スマホ業者の参入が盛んになっています。
積極的に各業界へのM&Aを行う楽天株式会社も通信キャリアの業界に参入しており、 楽天モバイルは格安スマホ業界で第四位の売り上げを上げています。
その楽天が格安スマホ業界では第六位のフリーテルの買収を決定しました。
楽天のフリーテル買収により格安スマホ業界はどのように変わるのでしょうか?
格安スマホ業界の現在のトップはワイモバイルとNTTコミュニケーションズ。
ワイモバイルはソフトバンク系列ですし、au系列のUQモバイルも勢力を伸ばしてきていることから格安スマホ業界も大手3キャリアの独占となるかと思われていましたが、 フリーテルを買収することによりその3社に楽天が食い込んでいくことになります。
フリーテルのM&Aを行うことで格安スマホ業界でのシェアを拡大することができること以外にもいくつか今回のM&Aは楽天にとってメリットがあります。
フリーテルのキャリア事業は純損失が55億円であり、 数字だけ見ればその黒字化は容易ではないように感じます。
しかし、その赤字の原因の大多数は販売促進や広告宣伝の費用であることから販売促進・広告宣伝の費用を削減すれば黒字にすること自体は容易です。
フリーテルは店舗販売メインの会社であったため販売促進費・広告宣伝費の削減は難しい課題でしたが、 もともとネット主体の楽天であれば販売をオンライン販売に切り替えることで両費用ともに容易に削減することができます。
広告宣伝を抑えることで新規加入者が減少するリスクはありますが、 仮に新規加入者が減少したとしても新規加入に関しては既存の楽天モバイルで獲得を続けるのであればM&Aの費用でフリーテルがもつ既存の加入者を獲得できるということになり同数の新規加入者を広告宣伝などで獲得するよりも安く多数の加入者を獲得することができることになります。
楽天はフリーテルの格安スマホ事業を5.2億円で購入することが決定しています。
事業承継の際には事業の抱える赤字分や流動資産も保有することになりますので、 楽天が今回のM&Aで抱える資金負担は21億円となります。
21億円の資金負担で格安スマホ業界でのシェアを拡大することができ、 獲得する加入者数は43万回線に及びます。
1回戦あたりの獲得単価は4,883円となりかなりの格安で加入者を獲得できるM&Aとなりました。
Yahoo!など独自プラットフォームをもつ事業はその事業体のフリークエントユーザー=ファンをどれだけ獲得できるかが最も重要です。
楽天モバイルのもともとの加入者数80万の半分にも及ぶ43万の加入者を獲得できたことで無料ポイントのプレゼントキャンペーンなど今後の施策で多くの楽天市場のユーザーを獲得することができるようになります。
楽天市場に活用できる43万ものフリークエントユーザーリストを購入できたことは楽天にとって大きなメリットと言えるでしょう。
赤字事業とのM&Aであっても自社との強いシナジーを生み出すことのできる M&Aの好例と言えるでしょう。